




樹木はCO2(二酸化炭素)を吸収し、酸素を出すということは皆さまも良くご存知だと思います。炭の原料になる樹木もそうやって大きくなってきたのですが、二酸化炭素を体内に固定することで成長しているんだということはあまり知られてないかもしれません。

この体内に固定された二酸化炭素は、伐採して燃やしたり、あるいは腐ると再び空気中に放出されてしまいます。
ただ樹木と空気中を循環しているだけで二酸化炭素を増やしているわけではないので、地球温暖化防止のために炭は樹木の中に二酸化炭素を固定する意味から言っても、植樹などで樹木を増やす努力は、大きな貢献と言えます。
さらに木炭にすることで二酸化炭素の放出を減らすことができます。
木炭1立方メートルで約1トンの二酸化炭素を固定できると言われています。炭は腐りませんので、ずっと二酸化炭素を固定しておくことが出来るわけです。
つまり大気中の二酸化炭素を少なくすることになります。仮に炭を燃焼しても、樹木→炭となって何十年かのスパンで大気と炭を循環しているだけなので、これも二酸化炭素を増やしていることにはならないといえます。
二酸化炭素が増えた主な原因に、石油や石炭な
どの「化石燃料」とよばれるものの出現が挙げられます。
しかし「化石燃料」も元々地球上にあったもの・・・、これも循環しているだけといえなくもないのですが、決定的に違うのは「化石燃料」が元の姿に戻るには実に何億年もの歳月が必要になるということなのです。
文明社会の発展とともに大量消費され一挙に二酸化炭素が増えたため、循環が滞って地球温暖化という問題が私たちに降りかかってきているのです。

確かに「炭」の働きは地球規模で見れば微々たるものではありますが、太陽光・風力・地熱などのエコエネルギーとともに、環境改善の新たな可能性を秘めたものである1アイテムとして、こんな試みがありますのでご紹介しましょう。
(2003.6.5 京都新聞より)
都市基盤整備公団関西支社は、現在建て替え中の服部団地(豊中市)で、工事に伴って伐採した団地の樹木から炭を作り、その炭を土壌改良剤として、同団地内の花壇や植え込みなどの植栽地に使用する試験施工を行っている。
大阪府森林組合の協力により、高さ5~8メートルのヒマヤラスギやケヤキなど約80本から4.7立方メートルの炭を作り、植栽地の土に混ぜ込む作業を行った。二酸化炭素を吸収して生長した樹木を炭にして埋めれば、二酸化炭素を地中固定することになる。
同公団関西支社は「既製の土壌改良剤を使った方がコストは安いが、樹木のリサイクルと二酸化炭素削減という観点から意義がある。」(造園課)と強調している。
関西電力は、インドネシアのスマトラ島で地元のパルプ会社や植林会社などと共同で、パルプ用に伐採した木材の樹皮や枝などの廃材から炭を作り、土壌改良剤として使用することで、二酸化炭素を地中に固定する実証研究を昨年秋から始めている。
三年間かけて廃木材から出来る炭の量や炭素の固定量を分析し、炭化技術の確立を目指す。三年間の実証研究で計630立方メートルの廃材を使い、390立方メートルの二酸化炭素が固定化できる見込み。関電は「今後、京都議定書の二酸化炭素排出権取引が本格的に始まれば、事業化も検討する」(広報課)としている。
また、地球環境産業技術研究機構(京都府木津町)は、2000年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、「樹木等の炭化による温暖化防止等複合環境対策技術の開発」と題して今年三月まで研究した。 樹木は成長過程で二酸化炭素を吸収するため、成長の早い樹木を遊休地などで育て、その後伐採してその他の植物性廃棄物と一緒に炭に加工。出来た炭を肥料や工業用素材として活用し、最終的に地中に埋めて二酸化炭素を固定する。
これらを一連の事業として実現できるかについて調査研究しており、舞鶴市をモデルに、樹木の収集や出来た炭の用途などについて調査した。
温室効果ガスの削減目標達成のために、自治体も二酸化炭素の削減に取り組むことが今後さらに求められる。RITE(地球環境産業技術研究機構)は「将来自治体が、せん定した街路樹の枝や生ゴミなどの廃棄物を炭にして、二酸化炭素削減事業を実施することも考えられる」と話している。
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